残業代の計算方法とは?未払い請求の方法についても解説
「長時間残業しているのにも関わらず残業代が少ない」
「残業しているのにも関わらず残業代がもらえない」
残業代のトラブルでもらえるはずのお金がもらえないと困ってしまいますよね?
今の職場の労働環境に耐えられず、勢いで転職してしまうと未払いの残業代を取り返せないまま退職をしてしまうことになりかねません。
退職を考えているのであれば、未払いの残業代を少しでももらってから会社を去りたいものです。
今回は会社から残業代を請求したいけれども、自分の残業代はどのようにして計算すれば良いのか?
未払いになっている残業代をどのようにして請求すれば良いのか?について解説をしていきます。
- 残業代の基本的な計算方法
- 残業の基本知識
- 働き方のタイプによって異なる残業の考え方
- 未払いの残業代があった場合の対処法
残業代が未払いになっていて困っている、残業代が少ないような気がすると思っている人は、是非本記事を参考にして残業代を計算してみて下さい。
残業代の計算方法とは?
勤務時間の上限は労働基準法第32条により、「週40時間、1日8時間」と定められており、残業代の基本的な計算方法は以下の通りです。
定時を超えた時間1時間につき×1.25
ですがすべての残業に、この計算方法が当てはまるわけではありません。
残業代を正確に計算するには、1時間あたりの給料がどれくらいなのか?何時間残業したのか?残業の種類はどれか?などを把握しないと計算することできないからです。
また「裁量労働制」「管理職」「日給」「変形労働時間制/フレックスタイム制」といった働き方を採用している会社もあり、この場合は残業代の計算方法も変わってきます。
- 残業代を計算するには1時間あたりの給料を把握する必要がある
- 残業代を計算するには何時間働いたかを把握する必要がある
- >残業代を計算するにはどの残業の種類にあたるかを把握する必要がある
- 残業代の計算は働き方によって違う
ここからは、残業代を計算する基本的なルール、働き方別の計算方法を説明していきます。
残業代を計算した方が良い理由
残業代を計算した方が良い理由は以下の通りです。
- 自分自身の働き方を見直すため
- 今の会社にそのまま居続けるか否かを判断するため
いくらやりがいのある仕事でも、サービス残業ばかりしていては心も身体も疲弊してしまいます。
残業したのにも関わらずそれに見合った給料が支払われていないと感じたら、残業代を自分で計算してみましょう。
計算することによって、今まで損をしていたこともあれば、逆に思っていたよりも残業代がもらえたことに気付く可能性もあります。
また、退職を考えたときに未払いになっている残業代を会社側に請求するときに、自分で残業代を計算しておけば会社側との交渉もスムーズになります。
残業代を計算する前に基本的なルールを確認
残業代を計算する前に、残業代の基本的な3つのルールを確認しましょう。
- 残業代の上限
- 残業をするのに必要な36協定
- 残業の種類と賃金割増率
それでは1つずつ解説します。
労働時間の上限
労働時間の上限は労働基準法第32条で「週40時間、1日8時間」となっており法定内労働時間として定められています。
この時間を超えて働いた部分が「残業」として扱われます。
残業をするに必要な36協定
36協定とは「時間外・休日労働に関する協定届」のことをいいます。
会社が時間外労働・休日勤務を労働者に依頼する場合、書面によって労働基準法第36条に基づいた(36協定)を結び、労働基準監督署に届け出することが義務付けられています
残業の種類と賃金割増率
残業の種類は「法定時間外労働」「深夜労働」「休日労働」など様々あります。
それぞれ賃金割増量が異なり、貰える残業代が変動するのでどの残業の種類に当てはまるかを確認しましょう。
残業の種類と賃金割増率の以下のようになっています。
残業の種類 | 賃金割増率 |
---|---|
法定時間外労働 | 25% |
法定時間外労働(1カ月60時間を超えたとき) | 50% |
深夜労働 (午後10時~午前5時まで働いたとき) | 25% |
休日労働(法定休日に労働した場合) | 35% |
法定労働時間+深夜労働 | 50% |
法定時間外労働+深夜労働 | 75% |
休日労働+深夜労働 | 60% |
※休日労働の場合は8時間を越えても時間外労働の25%の割増が加算されません。
※法定時間外労働の代替休暇取得の場合は50%ではなく25%に引き下げられます。
法定休日は労働基準法で定められている「週1日」「4週間を通じて4日以上」というように必ず与えられる休日のことをいいます。
暦通りの土日、祝日が該当するのではなく会社によって定められた曜日とシフトに従ったものになります。
なので土日祝が休みではない人は就業規則を確認してみましょう。
法定休日がもらえていない人は、出勤日に割増の残業代が発生している可能性もあるので注意しましょう。
- 労働時間の上限は週40時間、1日8時間
- 残業するには36協定の締結、届け出が必要
- 残業の種類によって貰える賃金が違う
- 法定休日が貰えてない人は割増の残業代が発生している
労働時間の上限は週40時間、1日8時間なので越えたら残業代が発生することになります。
今一度自分の就業した時間を確認するようにしましょう。
残業代の計算方法と考え方は働き方によって違う
残業代の計算方法と考え方は働き方によって異なります。
- 裁量労働制(みなし労働時間制)
- 管理職
- 日給制
- 変形労働時間制/フレックスタイム制
ここではそれぞれの働き方と残業代の考え方について解説します。
これらに該当した働き方をしている人は、特徴を把握してから計算するようにしましょう。
裁量労働制(みなし労働時間制)
裁量労働制とは、8時間以上のみなし労働時間と休日出勤に残業代が発生するという制度になります。みなし時間労働制とも言われるものです。
例えば、みなし労働時間が1日8時間という場合は6時間働いたとしても10時間働いたとしても、8時間働いたとみなされます。
ただ一カ月の労働時間の合計がみなし労働時間の上限を越えたという場合は、その越えた分の残業代は支払われます。
求人票を見てみると「月給24万円以上、月20時間分のみなし残業手当(5万円以上)を含む。時間超過分は別途支給」というような記載がされています。
この場合に残業代が支給されるのは月20時間を超過した分で、月20時間以内の分は残業代が発生しません。
「1時間あたりの賃金」×「みなし労働時間を越えて働いた時間」×「1.25(法定労働時間を越えた場合の割増)」
例えば月20時間分のみなし残業代手当が含まれていて、1時間あたりの賃金が1,786円の場合は、1,786円×20×1.25=44,650円の残業代が支給されることになります。
管理職
管理職は、残業代の計算方法と考え方が一般の従業員と違って異なります。
労働基準法において、管理職は残業代と休日出勤手当を支払わなくても良いと定められています。
ただ労働基準法上の「管理職」の権限が与えられないまま管理職として扱われている、いわゆる「名ばかり管理職」の人は、本来ならば残業代を受け取ることが可能です。
管理職とは以下のような人を言います。
- 経営方針の決定に参画をしている人
- 労働者の管理監督と指揮命令、採用等の権限を持っている人
- 出退勤について規制を受けずに勤務時間を自由に決められる人
- 職務の重要性に見合った十分な役職手当が支給されている人
管理職でも上記に該当しない人は「名ばかり管理職」である可能性があるので、一般職と同じように残業代が支給される可能性があります。
また、労働基準上の管理職であっても深夜勤務の割増賃金(25%)は支給されます。
日給制
日給制の計算は、月給制と同様に計算可能です。
日給制、月給制も所定労働時間を越えた分の労働時間から残業代が発生します。
この場合の残業代の計算方法として1時間あたりの賃金は以下のように計算することができます。
契約時に定められた日給÷所定労働時間
例えば「日給が14,000円で1日の所定労働時間が7時間」という契約の場合の1時間あたりの賃金は「14,000円÷7時間=2,000円」で計算可能です。
8時間を越えた場合は25%の割増賃金になるので、残業代は、2,000円×1.25×2時間=5,000円
日給と残業代を含めた合計金額は、14,000円+5,000円=19,000円となります。
変形労働時間制/フレックスタイム制
変形労働時間制というのは、労働時間の基準を1日単位ではなく月単位・年単位で精算するという制度です。
1日何時間働いたとしても、月・年単位で決めた時間内に収まっているならば残業代は発生しません。
例えば、1カ月で6日ほど8時間以上働いたとしても、月で決められた基準の時間をオーバーしていないので、残業したということにはなりません。
変形労働時間制は、土日出勤の多い仕事・シフト制・曜日や時期ごとで繁忙期と閑散期がある業界と職種に良く取り入れられていると言われます。
またフレックスタイム制に関しては、定められた労働時間(コアタイム)のなかであるならば、労働者自信が出社時間と退社時間を決められる変形労働時間制の1つです。
例えばコアタイムが10:00~15:00と設定している場合は、10:00~15:00に会社で業務をすれば出社、退社時間を自由に選べます。
変形労働時間制でもフレックスタイム制でも「週の労働時間の平均が40時間を越えていないかどうか」が残業代が発生する基準になります。残業が発生すれば、もちろん割増賃金の25%が計上されます。
- みなし労働時間の上限を超えた場合は残業代が発生する
- 管理職は残業代と休日出勤手当を支払わなくても良い
- 「名ばかり管理職」の管理職は残業代が出る場合あり
- 日給制は月給制と同様に残業代が計算できる
- 変形労働時間制は労働時間の基準を1日単位ではなく月単位・年単位で精算する
みなし労働の上限を越えた場合は残業代が発生するので、未払いのまま損をしないように会社に請求するようにしましょう。
自分の残業代を計算してみよう!
残業代の基本的なルールや計算方法が分かったところそれでは自分の残業代を実際に計算してみましょう。順序立てて説明していきます。
- 1時間あたりの賃金を算出
- 残業の種類ごとに残業時間を整理
- 残業代を計算
ここでは、Aさんという人物を例に挙げて残業代を計算してみます。Aさんの残業代の計算に必要な情報は以下の通りです。
- 基本給 30万円
- 平日午前9時から午後18時まで勤務(1時間休憩)
- その月の残業時間は30時間
残業代に必要な情報が揃ったところで、早速残業代を計算してみましょう。皆さんは自分の労働時間や賃金を当てはめて計算してみてくださいね。
1時間あたりの賃金を算出
まず1時間あたりの賃金の計算をしましょう。
計算方法は以下の通りです。
1時間あたりの賃金=月給÷1日の所定労働時間(定時)÷21日
21日と書いてありますが、休みの多い月などになると、21日よりも少なくなるため各自で調整しましょう。
Aさんの場合月給が30万円、定時が9~18時(労働時間8時間)なので、1時間あたりの賃金は以下のように計算されます。
30万円÷8時間÷21日=1,785.7円
ということで1時間あたりの賃金は1,786円となりました。
残業の種類ごとに残業時間を整理
先ほど説明したように、残業には様々な種類があって貰える金額も違ってきます。なので自分がどの残業の区分にあたるのかを把握しておく必要があります。
例えばAさんの残業時間は30時間としましたが、区分はそれぞれ以下のようになります。
- 1時間あたりの賃金が1,786円
- 月の法定時間外労働が10時間
- 深夜労働が10時間
- 休日労働が10時間
という場合は以下のように計算ができます。
- 法定時間外労働…1,786円×10時間×1.25
- 休日労働…1,786円×10時間 ×1.35
- 深夜労働…1,786円×10時間×1.25
このように残業の種類によって賃金割増率が違うので、個別に分けて計算して合計額を出す必要があります。
残業代を計算
残業の種類ごとに残業時間を整理したら、種類別の残業代を計算してから合計の残業代を出していきましょう。
- 法定時間外労働…1,786円×10時間×1.25=22,325円
- 休日労働…1,786円×10時間 ×1.35=24,111円
- 深夜労働…1,786円×10時間×1.50=26,790円
これらを全て合計すると22,325円+19,289円+26,790円=73,226円となります。
残業代が簡単に計算できるツール(サイト)
自力で残業代を計算するのがめんどくさいという場合は、残業代を簡単に計算できるツール(サイト)を使うのをおすすめします。
今回は以下の2つのサイトをご紹介します。
- 給与第一
- Casio 「keisan」
給与第一
こちらは京都第一法律事務所が開発した残業代計算ソフトになります。
裁判所でも活用されているソフトなので信頼性が高いです。そのまま訴訟資料としても利用可能です。
Casio 「keisan」
それほど正確でなくてもサッと残業代を計算したいという場合はCasioの「keisan」のサイトで計算するのがおすすめです。
法定労働時間、深夜労働、法定休日、月60時間超の割増の有無を入力することでサクッと残業代の適性価格の計算ができます。
残業代を計算して少ないときまたは貰えていないときは未払いを請求できる?
最後に残業代を計算してみて、残業代が少なかった又はもらえなかった場合の未払いの請求方法について解説をしていきます。
- 未払いを請求する前に自分で残業代を計算
- 会社と話し合い交渉する
- 労働基準監督署に申告
- 弁護士に相談
それでは1つずつ解説します。
未払いを請求する前に自分で残業代を計算
未払い分を請求する際には、未払いの残業代がいくらあるのか?をもう一度確認しておきましょう。
本記事にある残業代の計算方法を参考にして未払い分を計算してみて下さい。
ただ残業代の請求には2年の時効があるので2年過ぎないように注意しましょう。
そして未払いを請求するためには証拠を集めることが必要になります。
タイムカード、給与明細、源泉徴収票、就業規則といった証拠となるものを集めましょう。
会社と話し合い交渉する
会社側に法令遵守の意識があり、労働者側もある程度譲歩が検討できる場合は、会社と労働者が話し合いをすることで早期に解決できます。
話し合いの意志がない場合は解決が困難になってしまうのでその場合は他の方法を試してみるのをおすすめします。
労働基準監督署に申告
残業未払い問題は、労働トラブルのなかでも特に重要な問題として扱われています。
ですのできちんとした証拠があるのであれば、労働基準監督署に申告することで対応可能です。
費用も発生しないので、気軽に申告できます。
また残業発生に関する証拠が揃っているならば、正確な残業代の計算も行ってくれ匿名での申告も可能です。
ただきちんとした証拠がないという場合、違反事実がない状態になると労働基準監督は動いてくれないので注意です。
弁護士に相談
弁護士に相談するのも請求方法の1つです。
弁護士に相談をすれば会社と交渉できない、就業規則や給与明細などの最低限のものしかないという場合でもスピード解決が見込めます。
弁護士がいるだけで会社側の対応が変わるので、会社に本気度を伝えることもできます。
- 自分で未払い分の残業代を計算する
- 会社側に法令遵守の意識があり労働者も譲歩できるなら会社に交渉する
- きちんとした証拠があるならば、労働基準監督署に相談する
- 会社と交渉できない、就業規則など最低限の証拠しかない場合は弁護士に相談
会社に交渉できない状況ならば、労働基準監督署に相談、弁護士に相談して対応することをおすすめします。
まとめ
残業代の計算方法と請求方法について説明してきました。
残業代は残業の種類や働く制度によってもらえる金額が変わってくるので、自分で計算できるようになれば、どのくらい未払いになっているかを分かった上で、会社に請求することができます。
会社と交渉出来ないという場合は、労働基準監督署と弁護士に相談することをおすすめします。
- まずは自分の1時間あたりの給料を把握する
- 残業代の額は残業の種類や働く制度によって変動する
- 会社と交渉出来ないという場合は、労働基準監督署と弁護士に相談する
残業代を自分で計算して損をしないようにしましょう。