医療費控除とは?申請方法を確認して還付金の手続きをしよう
医療費控除の申請方法について知りたいですか?
今回は医療費控除申請の方法から申請をするメリットまでを解説します。
この記事を読めば、病気やケガによる医療費の負担を最小限にすることができますよ。
病気やケガをしてしまって医療費控除の申請を考えている人はぜひ、ご覧ください!
医療費控除とは?
医療費控除とは1年間で支払った医療費の合計が一定額を超えたときに、所得控除が受けられる制度です。
医療費控除を受けるには会社員でも確定申告の必要があります。
所得控除とは一定の条件に当てはまる場合に所得の合計金額から一定の金額を差し引く控除のことをいいます。
この所得控除を受けることによって納めるべき所得税の負担を軽くできます。
所得控除の種類はなんと14種類。
所得税額が「(収入-経費-所得控除)×税率」で求められるので、所得控除が多ければ多いほど納めるべき税率が低くなります。
医療費控除の申請をするメリット
医療費控除の申請をするメリットは所得控除が受けられるところです。
医療費控除は1年間で支払った医療費合計額が一定額を超えた分の所得控除が受けられます。
所得控除を受けた額に関しては税金を計算するための「課税所得」に含まれなくなるので、結果として税金が安くなります。
サラリーマンなど給与を受け取るときに税金が差し引かれている場合は、税金の一部が還付金として戻ってきます。
ただ還付を受けるには確定申告をする必要があるのでご注意ください。
また医療費は個人の分だけではなく、生計をともにしている家族の分も合算できます。
その場合はさらに所得控除の恩恵が受けられます。
医療費控除を申請するための条件
以下に該当する場合、医療費控除の申請対象になるかもしれません。
- 総所得200万以上…10万円以上の医療費の支払いがある
- 総所得200万以下…総所得額の5%以上の医療費の支払いがある
医療費控除額の計算式は以下のようになります。
- 総所得200万以上の医療費控除額=1年間に支払った医療費の総額-保険金などで補填される金額-10万円
- 総所得200万以下の医療費控除額=1年間に支払った医療費の総額-保険金などで補填される金額×5%
上記の計算式でマイナスの額になっていなければ、医療費控除の対象となります。
医療費控除を申請したらいくら還付金が戻る?計算してみよう
医療費控除の対象だとわかれば、すぐに申請することをおすすめしますが、果たしていくら還付されるのか気になりますよね。
ここでは、具体例を出して、実際に医療費控除による還付金がいくら戻るのかチェックしてみましょう。
医療費控除の還付金の計算の手順は以下の通りです。
- 1年間の医療費を計算
- 医療費控除額を計算
- 所得税率の確認
- 還付金の計算
それでは1つずつ解説します。
1年間の医療費を計算
医療費控除額を計算する前にまずは、1年間の医療費を計算しましょう。
医療費控除の対象となるのは、基本的に病気やケガに必要となる治療費・入院費・薬代となります。
健康増進を目的としたサプリメントの代金、差額ベッド・個室代金などは医療費の対象となりませんのでご注意ください。
医療費控除額を計算
1年間の医療費を計算したら、医療費控除額を計算します。
具体例を出しますので一緒に計算してみましょう。
Aさん(20代)
給与所得控除額後の金額 300万円
給与控除の合計 70万円
1年間に支払った医療費の合計 45万円
保険金等で補填される金額 10万円
この数値を使って、医療費控除額を計算すると、
45万円(1年間に支払った医療費の合計)-10万円(保険金等で補填される金額)-10万円=25万円(医療費控除額)
Aさんの医療費控除額は25万円になります。
この25万円が還付される額だと思われがちですが、残念ながらそうではありません。
それでは次の計算にいきましょう。
3.所得税率の確認
医療控除額の計算が済んだら、次に所得税率の確認をします。
所得税率は以下の表から確認できます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得税率の確認には、課税所得額を計算する必要があります。
課税所得額は、支払給与額とは違いますのでご注意ください。
課税所得額は以下の計算式で求められます。
所得控除後の金額 – 所得控除の合計 = 課税所得額
給与所得控除後の金額と所得控除の合計は一般的な会社員の場合、源泉徴収票に記載されています。
それでは、Aさんの課税所得額を計算してみましょう。
300万円(所得控除後の金額)-70万円(所得控除の合計)= 230万円(課税所得額)
課税所得額は230万円なので、Aさんの所得税率は10%です。
4.還付金の計算
医療費控除額と所得税率が分かったところで、実際に帰ってくる還付金を計算します。
還付金の計算は以下の通りです。
医療費控除額 × 所得税率 = 還付金
よってAさんの還付金額は以下のようになります。
25万円(医療費控除額) × 10%(所得税率) = 25,000円(還付金)
還付金額は25,000円になります。
ただし住宅ローン控除などで、控除額が納税額を上回る場合、25,000円の全てが還付されるわけではないので覚えておきましょう。
医療費控除の申請方法
医療費控除の金額や還付金のおおよその額がわかったところで、早速申請をしていきましょう。
申請方法で抑えておきたいポイントは以下の通りです。
- 医療費控除の申請するタイミング
- 医療費控除の申請の流れ
- 医療費控除の申請に必要な書類
これらについて順に説明をしていきます。
医療費控除の申請をするタイミング
確定申告の期間は2月16日~3月15日ですが、還付金を受け取る「還付申告」の場合は医療費のかかった翌年の1年から5年以内であればいつでも申告することが可能です。
例えば医療費のかかった年が2020年ならば2021年1月1日~2025年12月31日までの間にいつでも還付の申告ができます。
また過去に多額の医療費がかかってしまったのにも関わらず申請していなかった場合は、さかのぼって5年まで申請可能です。
例えば2020年中ならば2015年以降にかかった医療費の還付申告が可能になります。
ただ何年も経過してしまうと、
- 申請するのを忘れてしまう
- 領収書類の保管期間も送れた年数分長くなってしまう
- 還付金が長期間受け取れなくなってしまう
以上のリスクがあるのでなるべく早く申請しましょう。
医療費控除の申請の流れ
医療費控除の申請の流れは以下の通りです。
- 医療費控除に必要な書類を準備
- 所定の書類に必要項目を記入(確定申告書、医療費控除の明細書)
- 提出が必要な書類を地域の税務署に提出
- 1カ月~1カ月半程度で還付金が指定した口座に振り込まれる
書類の準備に時間がかかることが予想されるので、早めの準備をおすすめします。
医療費控除の申請に必要な書類
医療費控除の申請に必要な書類は以下の5点です。
- 医療費控除の明細書
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 医療費通知
- マイナンバー
それでは、1つずつ解説します。
医療費控除の明細書
医療費控除の明細表は税務署で入手するか、以下のリンクの国税庁のホームページから入手できます。
医療費の支払いを証明する書類であるレシートや領収書などをもとにしながら内訳を記入していきましょう。
確定申告書
確定申告書にはAとBの2種類の書類があります。
まず確定申告書Aは申告する所得が給与所得、公的年金当、その他雑所得、配当所得、一時所得のみの予定納税額のない人が利用できる書類です。
会社員はこちらの書類を使うことになります。
一方、確定申告Bは誰でも利用できる書類になるので自営業者はBの書類を利用することになります。
確定申告書の書式についても税務署から入手又は国税庁のホームページから入手可能です。
源泉徴収票(会社員の場合)
確定申告書の項目には源泉徴収票から転記する内容があります。
確定申告書を提出する際には源泉徴収票(原本)も提出しなければならないので忘れずに用意しましょう。
医療費通知
平成29年(2017年)からは医療費通知が必要となりました。
医療費通知は自分の加入している健康保険組合等から送られてくる書類です。
医療費控除申請のために申請する場合は必要事項が記載されている必要があります。
- 健康保険の加入者等の氏名
- 療養を受けた年月
- 療養を受けた者の氏名
- 療養を受けた病院、診療所、薬局の名称
- 被保険者が支払った医療費の額
- 保険者等の名称
これらの項目に欠けているものがある場合は、自分で記入する必要があります。
ただ令和元年(2019年)分までならば医療費通知を使用する方法だけでなく、領収書の内容を医療費控除の明細書に記入する方法でも申請することもできます。
マイナンバー
税務署に書類を提出するにはマイナンバーを提示する必要があるので、マイナンバーの用意もしておきましょう
医療費控除の改正に伴って変更になった申請方法
平成29年(2017年)分から医療費控除を申請する際に必要な添付書類が変更されました。
これまでは医療費控除の申告には領収書の添付が必要だったのですが平成29年度以降不要となりました。
代わりに平成29年分の確定申告からは「医療費控除に関する明細書」を添付することで手続をすることになりました。
また「医療費控除に関する明細書」の記入事項は健康保険組合等から送られる「医療費通知」を医療費の明細書として利用できることになったので、記入の一部が省略可能になりました。
その際に申告に係る医療費等の領収書は自宅で5年保存する必要があります。
ただ一定の要件を満たした医療費通知を添付した場合には、記載された医療費等に関する領収書の保存は不要になります。
過去にさかのぼって医療費控除を申請する方法
医療費控除は過去にさかのぼって申請することができます。
医療費控除の請求には期限がありますのでしっかりと確認しておきましょう。
医療費控除が申請できるのは5年前まで
医療費控除は5年分さかのぼって申請することができます。
例えば2020年12月31日ならば、2015年から2019年の5年分をさかのぼって確定申告書を提出することができます。6年以上過ぎてしまった場合はあきらめるしかありません。
還付を受けるために必要なものとしては以下の2点になります。
- その年の源泉徴収票
- 医療費の領収書
源泉徴収票は紛失してしまったなら職場に相談すれば再発行してもらえます。
過去にさかのぼって医療費控除を申請するときの注意点
一度その年分の確定申告書を提出していたという場合は「更正の請求」という手続が必要になるので注意です。
これは医療費控除を受けていたけれども追加の領収書が出てきた場合に起きます。
更生の請求は確定申告書に記入した金額が過大になってしまったときに正しい金額に修正するための手続になります。
書類は確定申告書ではなくて「更正の請求書」という書類が必要にです。
更正の請求書も国税庁のホームページからダウンロードができます。
医療費控除の申請方法が分からないときは?
これまで医療費控除の申請方法について書いてきましたが、実際に医療費控除を活用しようとすると分からないことも出てくると思います。
その疑問を1つ1つ自分自身で解決するには時間と労力が必要になります。
自分で解決するのがめんどくさいという場合は税務署の窓口で相談してみましょう。
通常は予約制になっているのでホームページから事前に相談の申し込みをしましょう。
税務署だけではなくて、ファイナンシャルプランナーや税理士などのお金のプロにも相談することができます。
その場合、保険相談や税務相談についての不明点も聞いてみても良いと思います。
まとめ
今回は医療費控除の申請方法について説明をしてきました。
医療費控除のメリットは医療費の所得控除を受けられて節税できるところにあります。
医療費控除の申請をするには確定申告が必要となりますので忘れずにおこないましょう。
- 医療費控除のメリットは医療費の所得控除が受けられ節税ができることにある
- 会社員が還付金を受け取るには確定申告が必要
- 医療費控除の申請には5年間という期限があるので注意
もし医療費控除の申請が良く分からないという場合は税務署の窓口、ファイナンシャルプランナーや税理士などのお金のプロに問い合わせるようにしましょう。