医療保険は必要?不要だと言われている3つの理由や加入時の注意点を解説
日本は公的医療制度が充実しているため、高額な医療費が必要となっても、ある一定額を越えた分は国が負担してくれます。
また自治体によっては、子供の医療費は無料というところもあります。
そのため、毎月数千円から数万円かかる民間の医療保険の加入は不要だと思う人も多いようです。
しかしながら、医療費の一部や通院の交通費、入院に必要な衣類や日用品は患者さんの自己負担になります。
少額とはいえ、入院が長期化すればその費用も高額になるでしょう。
貯蓄をしておく、民間の医療保険に加入しておくなどの準備をしておけば、突然の怪我や病気にも慌てずに対処することができます。
そこで今回は医療保険の必要性や加入時の注意点について解説します。
医療保険に加入していない人、医療保険ってどんな保険が分からない人でもこの記事を読めば安心です。
ぜひ最後まで記事を読んで、医療保険の加入を検討してみてください。
それでは1つずつ説明します。
- 医療保険が不要と言われている理由が分かる
- 医療保険が必要なケースが分かる
- 年代ごとに異なる医療保険の必要性が分かる
- 医療保険に加入するときの注意点が分かる
ここで医療保険の必要性や注意点について確認し、加入すべきか否かを検討しましょう。
医療保険は必要?
日本は公的医療制度があり、国民の全ての人が何らかの公的医療保険に加入しています。
一方で民間でも様々な医療保険商品が販売されています。
民間の医療保険の加入は自由ですが、公的医療保険制度が充実している日本で、民間の医療保険の加入は本当に必要なのでしょうか?
結論から言いますと、医療保険の加入は必要かどうかは断言できません。
理由は、人によって貯蓄状況や保険に求めるものが違うからです。
突然の怪我や病気になっても貯蓄が多い人は、保険に加入しなくても家計を圧迫することはありません。
逆に貯蓄がない人は、医療保険に加入しなければ怪我や病気に対応しきれずに家計に大きな負担がかかってしまう場合もあります。
例え貯蓄があったとしても、病気や怪我の療養中は働けないので生活費の足しとして医療保険に加入するという選択もあるでしょう。
民間の医療保険の加入は自由かつ様々な保険商品があるので、加入するか否か迷うところです。
医療保険は必要ないと言われている3つの理由
医療保険は必要ないと言われている3つの理由は以下の通りです。
- 民間の医療保険に頼らなくても社会保険で対応できる
- 医療費は貯蓄で対応できる
- 民間の医療保険は支払い条件に合わないと給付されない
1つずつ説明していきます。
民間の保険に頼らなくても社会保険で対応できる
会社員であれば被保険者保険(健康保険や共済組合)、自営業であれば地域保険(国民健康保険)などに誰しも加入しています。
これによって70歳までならば医療費が3割負担で済み、子供や70歳以上の高齢者の場合は、2割以下なこともあります。
さらに自己負担額が高額になったとしても一定額に達した場合は、それ以上を負担しなくてもよい高額療養費制度と呼ばれる制度も活用することができます。
高額療養費制度について例を挙げて説明しましょう。
例えば以下のAさんのケースで高額療養費制度を活用したとします。
- 年齢は60歳
- 年収が約370万円~770万円
- あるひと月の医療費自己負担額(月初~月末)が400,000円
この場合、自己負担額が90,763円になり、差額の309,237円は戻ってきます。
年収によりますが働き盛りの場合は、自己負担は8万円ちょっとで済むと言われています。
8万円くらいなら医療保険に頼らなくても貯金でカバーできると思う人が多いのではないでしょうか?
ただし、入院時の差額ベット代や個室代には高額療養費制度は適用されません。
また病気やケガで仕事を休んだ場合は傷病手当を受けることも可能です。
傷病手当金は、病気やケガで仕事を3日以上休んだ場合に4日目から最長1年6カ月までの期間内で支給されます。
支給額は標準報酬月額の12カ月分を平均してから30で割った額の3分の2です。標準報酬月額とはざっくり言うと、自分の給料と賞与額を合わせたものです。
なので本来仕事をしていたときに得られる賃金の3分の2の額をもらえるというかたちになります。
例えば標準報酬月額が30万円ならば、月額20万円の支給が受けられることになりますね。
また業務上のケガや病気であるならば労災保険から休業補償給付が出ます。
休業補償給付では、賃金がもらえない日が4日以上ある場合に4日目から基礎日額の60%相当額が支給されるものになります。基礎日額は直近3カ月の平均賃金です。
社会保険、高額療養費制度、傷病手当、休業補償給付といったこれらの公的医療保険や制度を活用すれば、民間の医療保険が必ずしも必要ではないかもしれませんね。
医療費は貯蓄で対応できる
公的医療保険では対応できない医療費は、民間の医療保険の加入で対応できますが、貯蓄があるならば医療保険に頼らなくても充分に対応可能です。
- 高額療養費の限度までの自己負担額
- 公的医療保険では支給できない交通費と入院にかかる雑費(衣料品や差額ベット代)
これらの医療費は社会保険で保障を受けることができませんが、ひと月に数百万・数千万円かかるわけではないので、貯蓄が十分あれば医療保険に入らなくても対応できるでしょう。
ただ自営業者の場合だと休業補償や傷病手当がありません。一方で大企業の場合は手厚い給付を行ってといるところもあります。
そのため、必要な貯蓄額はそのひとの職業や役職に応じてそれぞれで異なります。
生命保険文化センターのデータによると、入院時の1日あたりの自己負担費用と逸失(いっしつ)収入の総額は以下のようになっています。
逸失収入とは療養していたため得られなかった収入のことをいいます。
一番多い割合は10,000円~15,000円未満で21.3%となっています。
出典:「生活保障に関する調査」|公益財団法人 生命保険文化センター
一日あたりではなく全体の自己負担費用と逸失収入の総額で一番多いのが10万~20万円です。
ただなかには50万円~100万円という方も10%、100万円以上という方は5.5%もいるので、ある程度の貯蓄が準備できるまでは医療保険に加入するというのも手です。
出典:「生活保障に関する調査」|公益財団法人 生命保険文化センター
これらのデータを参考に万が一の医療費を貯蓄で対応するかどうかを検討してみると良いでしょう。
民間の医療保険は支払い条件に合わないと給付されない
民間の医療保険は毎月保険料を払っていたとしても、病気・ケガで入院、手術などの契約内容に該当するケースのみ保険金の給付が行われます。
給付金の支払い条件は保険会社や商品によって異なります。条件に当てはまらない場合は支払われないので注意が必要です。
例えば入院したときに支払われる、入院給付金の支払日数には限度があります。支払限度日数としては30日、60日、120日など商品ごとに異なります。
支払日数限度が60日の医療保険に加入していて、90日間入院しても60日分しか支払われません。入院が長期化すると保険商品によって、入院の途中で給付がストップしてしまう可能性があります。
また保険によって疾患の定義が微妙に異なっている場合があるので、同じ疾患であったとしても保険商品によって給付の対象になったり、ならなかったりします。
さらに医療保険を単体ではなく、生命保険の特約がついた医療保険に加入していた場合、保険料の払い込み期間しか保障されないことがあります。
そのため病気が気になる年齢になったときに医療保険使えなくなってしまうことも。
このように医療保険を支払っているのにも関わらず、病気や怪我などの条件を満たさなければ保険金の支払いを受けることができないことから、医療保険は不要だと考える人もいます。
- 民間の保険料を使わなくても手厚い社会保険で対応できる
- 貯蓄があれば医療保険を使わなくても対応できる
- 医療保険は支払い条件に合わないと給付されないので注意
医療費が高額になったとしても、高額療養費制度を活用したり、貯蓄が十分あったりする人ならば民間の医療保険に無理して入る必要はないでしょう。
医療保険が必要なケース
ここまでは、医療保険が不要な理由とそのケースについて説明しました。次は医療保険が必要なケースについて説明をします。
医療保険が必要なケースは以下の通りです。
- 自己負担額が家計を圧迫する場合
- 働けない期間の生活費に備えたい場合
- 先進医療や自由診療に備えたい場合
それでは1つずつ説明します。
自己負担額が家計を圧迫する場合
自己負担額が家計を圧迫してしまう人は医療保険を検討する必要があります。自己負担が必要な費用としては以下の出費が挙げられます。
- 差額ベット代
- 病院への交通費
- 身の回りの品の購入費
これらは高額療養費の対象になりません。しかしながら、これらの支出は意外と大きいと言われます。
また充分な貯蓄額がない(半年から1年程度の治療に耐えられる額がない)、支援を期待できる人がいない、勤務先の福利厚生が充分ではないという方も医療保険が必要です。
突然の怪我や病気によって家計が傾きそうな場合は、医療保険を検討してみましょう
働けない期間の生活費に備えたい場合
働けない期間の生活費を備えたいというときにも、医療保険に入っておくと保障が受けられます。
とくにに国民健康保険を利用している自営業の人は傷病手当金の給付がありません。なので働けない期間の生活費をどうするべきかという問題がでてきます。
貯蓄があれば良いですが、そうではない人は入院給付金の手厚い医療保険に加入することによって働けない期間の生活費を補うことが可能です。
また会社員で傷病手当金を受け取れる人でも、支給額は「被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額」で収入は確実に落ちてしまいます。
減収した分の備えとして医療保険に加入するのも1つの手です。
また医療保険ではなく働けない期間の所得を補償してくれる「所得補償保険」「就業不能保険」なども活用できます。
先進医療や自由診療に備えたい場合
先進医療とは厚生労働大臣が認めた高度な医療技術の医療のことです。大学病院や医療研究期間などで先進医療の研究・開発が行われています。
この先進医療にかかる費用は全額自己負担です。高額療養費制度の対象になるのは、一般治癒と共通する部分だけになります。
医療保険のなかには、先進医療に対応できる「先進医療特約」が付加できるものがあります。
いざというときに先進医療を使いたいけれど、経済的余裕がないため支払えない…というのを避けたい人は先進医療特約の付加を検討してみましょう。
一方、自由診療とは医療法・医師法の規定内で患者と医療機関が個別に契約して行われている診療のことをいいます。
この自由診療では、厚生労働省が承認していない治療方法や薬を使った治療をしてくれるケースもあります。
公的健康保険は適用されませんが、民間医療保険のなかには自由診療を補償してくれる医療保険があります。
- 医療費の自己負担額が家計を圧迫するならば医療保険加入の必要性がある
- 働けない期間、傷病手当だけで足りない場合は医療保険でカバーできる
- 先進医療や自由診療は自己負担ですが医療保険でカバーできる
社会保険などでカバーできない差額ベット代などの自己負担額を民間の医療保険でカバーできるので安心です。
療養期間中に傷病手当だけでは生活できないという人も医療保険の加入をぜひ検討してみて下さい。
年代によって異なる医療保険の必要性
年代によって医療保険の必要なケースは異なるので、ここでは年代別の医療保険の必要性について説明をしていきます。
- 20~30代前半
- 30代後半~40代
- 50代~
それでは1つずつ説明していきます。
20~30代前半
20代~30代前半の場合は体力があり、独身の人が多くまだ家族がいないということからも保険に対しての意識が低くなってしまいがちです。
ただ若くて体力があっても、事故や災害に巻き込まれて大きなケガをしないとは限りません。乳がんや子宮がんといった20代や30代の若い女性がかかりやすい病気もあります。
また働いている年数が少ないということもあり、十分な貯蓄ができていないという方も多くいるでしょう。
なのでいくら若くて健康だからといって医療保険の必要がないとは言い切れないところがあります。そのため若い方でも医療保険への加入を検討する必要があります。
この年代は今は独身であってもいずれは就職、結婚、出産という大きなライフイベントを迎える年代になります。
- 自分の備えは自分でする
- 結婚、出産時にケガや病気で働けなくなったら配偶者や子供の生活を守るために備える
というように保険を考える機会にしましょう。
また若いうちに保険に加入するのなら終身保険に加入することも検討してみましょう。
終身保険は保障が一生続き保険料が変わらないという保険です。若い時から加入したほうが保険料が安くなるのでお得ですよ。
終身保険のなかには解約時に解約返戻金が受け取れるものもあるので、貯蓄の面も期待できます。
30代後半~40代
30代後半~40代の場合は、家庭を持って子育てをしているという方が多いかと思います。
お子さんの学費が年齢と共に増え、マイホーム購入などの出費も重なります。なので貯蓄を続けることが難しくなり、場合によっては貯金の取り崩しも検討しなければならない場合も。
ケガや病気をしてしまった際に子どもや家族のための貯金をできるだけ使わないようにするためにも医療保険の加入を検討しましょう。
医療保険の加入によって、貯蓄と保険の2つでリスクに備えることができます。
そしてこの年代は、生活習慣病とがんのリスクの上昇を意識する必要があります。
そのため医療保険に生活習慣病とがんの保障を手厚くする特約を付ける、がん保険の加入など保険の見直しも検討してみるといいですね。
50代~
50代になると子育てが終わって住宅ローンの完済も視野に入ります。子供がいない世帯ならば、貯蓄に余裕がある人が多いでしょう。
これからのセカンドライフを充実させるためにはリスクが高くなる心疾患や脳血管障害などに備える必要があります。
そのため長期入院などがあっても老後の生活資金を減らさないように医療保険を充実させていく必要性が高まります。
介護が必要になる可能性も視野に入れる必要もあります。
子どもに医療保険は必要?
幼少期の子供は熱を出してしまうなどによって体調を良く崩してしまいます。ただ入院する傾向は少ないようです。
出典:患者調査 平成29年患者調査の概況 |厚生労働省
厚労省のデータを参照してみると、0歳児を除いた幼少期の子供は外来は多くなっていますが、入院が少ないということが分かります。
そして乳幼児は自治体からの助成があるので、医療費が基本的に無料または一律料金になります。
自治体によっては、小学生と中学生まで医療費を負担しなくても良いケースがあるので、医療費の負担を低く抑えることが可能です。
ただ幼少期から思春期にかけてはケガや病気になる可能性がゼロではないです。10歳代に関しては、学校の授業と部活動で活発に体を動かすような年齢です。
なのでケガやアクシデントの心配もあります。医療保険は持病と病歴がある場合には、加入のハードルが高くなることが多いです。
なので健康なうちに医療保険に加入させておこうというのも懸命な選択ですね。
- 20~30代といった若くて体力があるといっても大きなケガをしないとは限らない
- 30代後半~40代は、生活習慣病やがんのリスク上昇を意識する必要があり
- 50代~は長期入院に備えて医療保険を充実させる必要があり
- 0歳を除いた幼少期の子供の入院数は少ない
それぞれの年齢層によって、健康状態やライフプランが異なってくるので、そのときに合わせた医療保険の加入の検討をしてみましょう。
医療保険の加入のタイミング
さきほども触れましたが医療保険は健康なときに加入するのがベストタイミングです。持病があったり通院していたりすると、医療保険の商品によってはに加入できないことがあります。
もし加入できても過去にかかってしまった病気や、特定の体の部位の保障が対象外になるという条件がつくことも。
持病を抱えている人も保険の種類によっては加入することができますが、その場合は一般の保険料と比べて保険料が高くなってしまうことが多いです。
なので健康なときこそ医療保険に入っておくとおトクになります。
医療保険加入時の3つの注意点
医療保険が必要な人が分かったところで、ここからは医療保険に加入するときの注意点についてお話したいと思います。
医療保険加入時の3つの注意点については以下の通りです。
- 病気やケガが長引いたときの保障
- 医療保険にがんが保障されているか
- 医療保険に加入できないケース
それでは1つずつ説明します。
病気やケガが長引いたときの保障
医療保険には支払限度日数の長い保険があります。ただそのその分保険料が高くなります。
保険料を抑えつつ長期入院に備えるには、入院が長引きやすい特定の病気のみ、入院限度日数が延長されるタイプの医療保険に加入することが挙げられます。
医療保険にがんが保障されているか
日本人の生涯では、2人に1人がかんにかかってしまうと言われているので、がんの特約やがんの保障の必要性は高いです。
医療保険には、がんが保障されている保険商品もあります。がんの保障を受けたい人は、医療保険にがんが保障されているかどうかを確認しましょう。
医療保険に加入できないケース
いざ医療保険に加入しようとしても、加入できないケースがあります。医療保険に加入できないケースは以下の通りです。
- 健康状態に問題がある
- ケガする危険の高い仕事に就いている
- 倫理的な問題を起こしている
持病がある、過去に大きな病気をしたことがある人は保険に加入できない恐れがあります。
また他の職業と比べてケガを負ったりするなどの仕事に就いている場合は、加入を断られる可能性も。
そして不正利用を目的に医療保険を利用しようとしている人も医療保険に加入できないケースに該当されます。これに関しては普通に利用しているなら大丈夫な条件ですね。
- 入院が長引きやすい特定の病気のみ支払限度数が延長される医療保険がある
- がんの保障を受けたい人は医療保険にがんの保障があるのかを確認しましょう
- 健康状態に問題あるなどが原因で医療保険に加入できないことがある
医療保険に加入するときはこれら3つの注意点についても考慮しながら、健康なうちに加入することをおすすめします。
まとめ
今回は医療保険が必要とされない理由や必要とされるケースなどについて説明しました。
医療保険を必要とするかしないかは、加入する人の状況によって異なってくるので、自分の状況を把握してから医療保険を加入するかどうかを検討することをおすすめします。
- 医療費は医療保険に頼らなくても社会保険や貯蓄で対応できる場合がある
- 医療費の自己負担額が多くなってしまった場合などは医療保険の必要性がある
- 年代によって健康状態などが異なるのでそれぞれに合わせた医療保険を選ぶ
- 健康状態によっては医療保険に加入できない場合があるので注意する
公的医療保険を利用したり貯蓄があれば高額な医療費にも対応することができますが、自己負担額が重んでしまった場合はカバーできないことがあるので医療保険の加入を検討してみましょう!
健康状態によっては、医療保険に入れないこともあるのでなるべく健康なときに医療保険に加入することをおすすめします。